「なにも面白いことなかった…」


内容には特に興味がなかったためサクサク読み進めていたが特に人を惹きつけるような表現もなかった
オカルト系に足を踏み入れるのが一種の社会現象にでもなっているのだろうと自分に納得させ、落胆しながら雑誌を戻せばちょうどのタイミングで店長が到着した
なんでもいきなり車がエンストして業者を読んでいたとかで
原因はわからずじまいだったらしいが業者がエンジンをいじると直ったらしたらしいので気にしてないんだそう

店長が来たため状況を説明したあともう一人のバイトが来るまでヘルプ残業をして帰路についた
バイト先のコンビニから出ていつもの癖で駐輪場へ行くがタイヤがパンクして乗ってきていなかったことを思い出しそのままUターンして家までの道を歩く

中学に上がってからずっと自転車で通っていたせいか、ゆっくりと歩いて帰るこの道はいつもと違うような感覚に陥る
夏の夜風が吹き抜けて心地よい清涼感をもたらす
…ふと幼い頃よく行っていた川のことを思い出した
この時期のこの時間、あの川はたくさんの蛍が飛び交いとても美しかった
幼心ながらにひどく感動したのを覚えている
…久々に見に行くのもありか
そう考えて自宅からほど近い公園へと寄り道し、公衆トイレの裏から秘密の抜け道を通って少し山へと登る
…数分もしないうちに小さな小川が見えてきた

この川を下ればすぐそこが俺の家だが、蛍がいるのはもう少し上流の水が澄んでいるところ
時間も時間なため早足で小川の辺を登る
携帯のライト機能を使って足元を照らせば人の手が加えられていない獣道
幼少期に戻ったようにワクワクしていた

だいぶ登るとライトを消し、目を凝らして進む
…小さな光がフワフワと飛んでいた
蛍だ
俺は近くの岩に腰掛けてその光景を眺める
始めは数匹弄れるように飛び回っていただけだったが時間が経つに連れどんどん増えていき、幼い頃に見た神秘的な光景が広がる
…こういうものは何時に何度見ても感動するものなんだと小さく笑った