「あら、かなたちゃん。
今日は何かいつもとは違うね」

話をしていた途中でお母さんが唐突に言う。

お父さんはそれを聞いて私の顔をジッと見てくる。

「え…いや、…私、何も無いと思うけど…」

「そうかぁ?
何だか雰囲気が違う気がするぞ」


私が吃驚しながら応えた。
お父さんは自分の意思を貫くようで、はっきり言う。

確かに、そうかもしれない。

自分でもほんの少し違うのは自覚がある。でも、気づかれるレベルに違うなんて思ってもみなかった。

お父さんの言葉にお母さんは「なるほど、確かに」などと同調したため私は黙り込んでしまった。

「ということは、かなたちゃんに何かあったのかな?」

「うぅ…そんなこと私にも分からないよ…」

私が俯きながら言うと、お父さんもお母さんも私を心配そうに声をかけてくれた。

「まあ、そんな日もあるわよ。
かなたちゃんが落ち着いていればそれでいいのよ。
かなたちゃんが幸せなら私たちも嬉しいもの」

「今日も状態が不安定ってことは、下手したらまた、長い間学校へ行けなくなるかもしれないからね。
明日も家で安静にしなさい。
何か思う事があればお父さんも相談に乗るよ」


私は優しい親の言葉を聞いて安心した。

気がつけば、目に涙が溜まっていた。

「泣きたい時に泣きなさい」


お母さんは私の顔を見ないでそれだけ言った。

涙は私の頬を伝い私のスカートに落ちる。

少し慌てて涙を拭っても、涙が止まらなくて逆に何かを失くした時の様な空虚感を感じた。


やっと家に着いた。

私は車椅子を乗り換えて、自室へ向かう。

私は無理矢理、ベッドに横たわると大きな溜息を着いた。