「また、彼氏?」


「か、彼氏、じゃないから、あの人は」


「同棲してんだから彼氏だよもう。で、その人なのまた」


「……」


「話したくないのなら、いいけど」



私は肩を落とした。

話したくないわけじゃないのに。
あまり、他の人に言いたい気分ではなかった。




「そういや、桐は将来どうすんの?」

「…将来?」

「そう、夢とか、ないの?」



夢……か。



「考えたこと、なかった」

「へー、まあ、桐ならなんでも出来るよ。」

「なんでも…は出来ないと思うけど」

「出来るって。桐がやりたいって思うことがあるなら、出来ないわけないじゃん」



にっと歯を見せて笑う山花に、少しだけ私も笑った。

夢なんて、そんな大層なもの見ない。
今までは、ただ、藍くんの側に居られればとだけ考えて生きてきた。


これからは、どうなのかな。


藍くんが変わって、私も考えが変わったはずだけど。
それでも、やっぱり、心のどこかで彼の側にいたいって思っている。




「桐の思ってる人ってどんな人なんだろーなー。

私も見てみたいもんだ」


「…ダメよ。かっこよすぎて惚れちゃうかもしれない」


「だーいじょうぶだって。私今は月島さん熱がすごいしー」


「…山花って、アイドル好きそうね」


「え、なんでしってんの?」



知らないわよ。


私あなたに最初医者になろうと思ったきっかけで、ある男性の話を熱くされた覚えがあるんだけど。

もう忘れたのかしら。



「山花は結局、前に話していた助けてくれた人のことはいいの?」


「え?いいっていうか、私、すげーその人に感謝してるし、好きだし、あれ以来一度もあってないけどさ、

今の私はその人のお陰だし」


「…恋愛的な好きではなかったの?」


「え、違うよ~。普通にかっこよかったし、もう目がハートだったけど、会える見込みもないしだいたい私のことわすれてるだろうし、

そんな本気で言ってなかったって。あ、感謝してるし尊敬してるのは本当だよ」


「じゃあ、月島さんを好きなの?」


「好きだよ!あ、別に、付き合いたくはないけどな!」



山花は、普通の女子なのかしら。いや、普通よね。

というより、そんな好き好き言っといて付き合いたくはないって少し月島さんがかわいそうすぎる気がする。