よかった。

とにかく、月島さんには分かってもらえたようだ。


「山花、よかったね。この人、T大の医大生だから、色々勉強できるよ」


「へ?あたし桐じゃなきゃやだ」




・・・・・・・。


は?




「やっだよ~、こんな顔もまともに見えないだらしない男に教わるなんてー、

桐の方いい!!」


「ちょ、山花、相手医大生だよ、失礼」


「なんで桐教えてくれないんだよ、今まで教えてくれたじゃんかよ」



まさか、こっちからこんなに反発されるとは思わなかった。
こっちに関して、まったく言い訳を考えずにいたから、あせってしまった。



「おい、だーれが顔もまともに見えないだらしない男だって?」


「お前だよ!」


「ほぉーーーーーーう??ずいっぶんな口聞くじゃねーの。クソガキ。

来い。その人間性から叩き直してやる」


「え、あ、ちょっ、いて、離せって、桐ーーーーっ!!!やだやだ、あたし、桐がいいーーーー!!」


「私より詳しくいろんな事教えてくれるから、がんばって」


「いぃいーーーやだぁあーーーーー!!!!」




奥の部屋に引きずり込まれていった山花を見届けて、私は藍くんの部屋に戻った。

そっと部屋を覗くと、藍くんはまだ寝ていた。

そろそろ、夕飯を作る時間だ。


今日は、何を作ろうか。




そうだ。


藍くんの好きなビーフシチューを作ろう。



エプロンをつけて、台所に向かう。

聞きなれた藍くんの寝息。


なんだか、たまに、そのまま永遠に目が覚めないんじゃないかと思うことがある。


ただの杞憂だけど。


こんなに寝て、さぞ寝不足に悩まされることはないのだろうな。



私はなんだか、ここにきてからよく寝不足だよ。


こんな感じに、すぐ二ヶ月も過ぎて行くのかな。



なんだか、永遠に感じられそうだ。


この時間、この瞬間、


私と藍くんは、永遠に閉じ込められたらいい。




彼は目を覚まさずに、
ワタシも彼の横で2度と目を覚まさずに。


なんて





ただ、終わりがあることに実感が持てなかった。



それだけ。