口をついて出た言葉は、悪あがきだった。
もう、この場でしか、きっと藍先輩と話すことはかなわなくなる。
これが最後、もう、後はないのだから。
「藍先輩が好きです、世界一好きです、藍先輩しかいないんです。
絶対、後悔させません、私は、他の子みたいに、先輩のこと外見だけで好きになったんじゃありません。
優しいところが、大好きです。だから、あの、きっと幸せにしますから、私と、付き合って欲しいんです」
ずらずらと出てきた、準備していない言葉たち。
これで、最後だ。
「いいよ」
「へ?」
「付き合っても、いいよ。付き合いきれるなら」
耳を疑った。
私は、息をするのを忘れて、目が乾くくらい瞬きした。
「ほ、ほんと、ですか?」
「さあ」
「さあって」
「俺は、それでもいいって言ったけど、そうするのかそうしないのか決めるのは、そっちだから。
俺は、君が思ってるような人間ではないし、君の望むこと何一つしてやらないけれど」
「それで、いいです、それで、おねがいします」
「あ、そう」
先輩はそう言うと、私から目を背けた。
私はもう何も考えられないぐらい、嬉しくて、嬉しくて、また泣きそうになった。
「先輩、また、明日会ってくれますか」
「……明日、休日」
「そ、そうですね!じゃあ、月曜、一緒に帰ってくれますか?」
「別に、いいけど」
「分かりました!じゃあ、月曜の放課後、玄関で待ってますね!」
保健室を出たあと、一人でガッツポーズをした。
まさか、こんな、こんな結末が待ってるなんて思わなかった。
私、藍先輩の彼女になれたんだ。
藍先輩の、初めての彼女に…
「へへ、えへへ」
百合に言わなくちゃ。
ああ、どうしよう。
嬉しい。
嬉しい…
無意識でもにやけてしまいそう。
私、絶対に先輩に後悔させないようにする。
先輩を幸せにする!!