告白をし始めて、4日目になる。



今日も別の場所で藍先輩を待った。

いつもなら、数分待てば来てくれたけれど、その日はいくら待っても来なかった。


なんとなく、終わった、と感じた。



けれど、違う便箋に筆跡も変えて、場所も変えたのに、私ってわかったのかな。


考えることはたくさんあったけど、とりあえず落ち込んだ。
これ以上ないくらい、落ち込んだ。


フラれるより、悲しかった。



それが、もしかしたら、藍先輩の答えだと思うと、なおさら。



待つこと一時間、私は、鞄を肩にかけた。



少し涙が出た。



人気のない廊下を歩く。


ふと、空き教室に目がいった。

誰かいる。




私は、その空き教室に駆け込んだ。


もし、先輩が来なかったなら、私ともう顔を合わそうと思っていなかったのなら、


ここに、藍先輩がいるのは、おかしい。




「藍…先輩…?」



床に座って、壁にもたれ掛かる藍先輩に声をかけると、
藍先輩は驚いたように顔をあげた。

動揺しているのが、見てとれた。



「あの、ここで何して、」

「なにも」

「……手紙は」

「…また君だったわけ」

「すみません、けど、まだ学校に居るってことは、告白してもいいんですか?」



少し、自惚れすぎた発言だった。

藍先輩に、少なからず期待してた証拠だ。




「もう、俺に関わらないで」

「え…」

「今日は、そのつもりで、行かなかった」



覚えてもらったくらいで、

調子に乗った罰だ。


フラれるよりも、辛い結末。

というより、フラれた上で、もっと、辛い結末。




「……先輩はここで、何をしてたんですか…?」

「…寝不足、だったから、寝てた」

「こんなとこで寝ない方いいです、保健室行きましょうよ」

「そうする」



先輩が立ち上がろうとすると、少しふらついた。
だから、支えるつもりで手を伸ばした。



「ちゃんと寝てくださいよ、保健室まで一緒に行きます」

「…悪い」



振りほどかれると思った。


予想外なことだったから、私は頭をひねった。



そのあと、先輩と保健室まで一緒に行った。

運悪く、先生は出張で、保健室には鍵がかかっていた。



「先輩、私、他の先生に聞いて鍵貰ってきましょうか」

「いい」

「けど、」

「持ってる」



先輩は鞄から鍵を出すと慣れた手つきで鍵を開けた。
そのとき、浮かんだ疑問を口にしようとしたけれど、なんとなく止めておいた。



私は、掛け布団を先輩に渡した。



「ありがとう。もう、行っていいから」

「あの……1つ、いいですか?」

「なに」

「先輩の…タイプは…どういう人なんですか?」



藍先輩は少し黙ると、ゆっくり話してくれた。



「俺しか、愛せない人」


「……それだけ?」


「そんだけ」


「わ、私は、藍先輩しか、居ませんよ」