その日の夜、5枚のラブレターを書いた。



私は、リミットをつけることにした。


この5枚のラブレターが全部なくなったら、告白もやめるって。


その5回で、最大限のアピールをするって…


昨日は逃げてきたけれど、次からはもっと長く話をする。

お話のネタも作ってく。



今回は準備が足らなかった。



一人反省会と、明日に向けた計画を立てた。

正直、うまくいく確証は1%もなかった。

私は、ほんとに普通の女の子だったし、勉強も普通で、運動だってできる方じゃない。

目立たない女子。



そんな私が、こんなにも必死に藍先輩に振り向いてもらおうとしてるのは、

このまま終わるのは嫌だったからだ。



変わりたいと願ったから。



そして、次の日、2度目の告白をした。

今度は昨日と別の場所に呼んだ。


藍先輩は少しだけど表情を変えた。


結果やっぱりフラれたけれど、その日は、手作りクッキーを先輩に渡した。
すぐ逃げないで、話をしようとした。


先輩は部活してないんですか?

先輩は甘いもの食べますか?

先輩はこのあとすぐ帰りますか?


藍先輩はうん、とか、そう、とか、いやとか、それだけだったけれど、
それでも、昨日より話せた。


それに、きっと覚えてもらえたと思う。


そしてまた、次の日。


別の場所に来た藍先輩は私を見た途端笑った。


私のことを覚えてくれたみたいで、私はそれがすごく嬉しかった。


私はその日、ワッフルを作ってきた。
藍先輩はそれを受け取ってくれた。


そして、その時初めて、藍先輩が私に話しかけてくれた。



「俺のどこが好きなの?」



私は、すぐに答えた。




「優しいところです」


「俺優しくないし、性格悪いんだけど」


「そんなことないです」


「俺のこと知らないじゃん」




そういう藍先輩は、笑っていなかったけれど、私は笑顔を崩さなかった。
崩したら負ける気がした。




「優しいってことは、知ってます」




藍先輩のため息。






私は、このとき、



藍先輩を本当の意味で知らなかった。



いや、きっと、これからも、



知ることができないとわかるのは、
もっと、先のこと。