目の前でバカにするように笑う彼の顔は綺麗だったけど、
少し、昔とは違う印象を受けた。

昔は、もう少し言葉は上品だったと思うのだけど。

それより、新たな口説き文句だなんて、失礼するわ。


久しぶりに会ったからってからかっているのかしら。



「藍くん?あまりからかわないでくれる?それに、口説き文句じゃない。
藍くんは、昔、ほんとにそう言ったのよ?」


「変な女。お前、本気でそれ言ってんの?だとしたら止めてくれる?すげー萎える」


萎えると言われても、本当のことなのに、藍くんは、忘れてしまったの?

あんなに、一緒に遊んだのに、誓いあったのに。


「ひどい、ひどいわ。藍くん私を忘れたの…?

桐のものになるって言ったのに…」


うっうっ、せっかくの再開がこんなものだなんて、ひどい、ひどすぎるわ。

涙が出そう。


「あのさー、嘘泣きとかそういうのなしでいいから、さっさと言えば」


「何を…」


「俺の寝込みを邪魔したんだから、それなりにやりたいわけだろ」


「だから何を」


「とぼけんなよ」


その瞬間、世界が反転した。

私は、ベッドの上に倒れ混んだ。
さっきよりもずっと、藍くんの顔は近くにあって、吐息がすぐそばで聞こえた。


私の上に覆い被さった藍くんは、不敵に微笑んだ。




「私を抱いてって、一言言ったら、それなりのことしてやるっつってんの」


「・・・・・・・・・・・・は、は?な、なに、嫌、違う、え?嘘、嘘よね、藍くんは、そんなこと、ちょ、どこ触ってんのよ!!!」


藍くんの細長い指先が太ももを伝ってスカートの中へ侵入しようとしているのを必死で阻止した。

嘘、嘘、嘘だ。

藍くんは、こんなことしない。
こんなシチュ望んでいない。

藍くんになら触れられていいとは確かに思った。だけど、まず、

こんな人は、藍くんとは認めない、認めたくない、というか、違う‼‼





「あ、入学式も終わったか。

わりーな、また今度な。次はもっと上手く誘いな」


「あ、ちょ、藍くん…‼…じゃない、違う藍くんじゃない…違う…違う…」


ぶつぶつとベッドの上で呟いていると、

藍くんは、そのまま保健室を出ていってしまった。
私は、ただただその背中を見送ることしかできなかった。