とはいったものの、
やっぱりそう簡単にはいきません。

細々とした地味ーなアピールなんて毎日何十人の女の子を相手にしている藍先輩の記憶に残るはずもなく。



「こう、何か、決定的なシチュエーションがないと何にも変わんないよね」

「そうなんだよね…」

「告白したら、絶対フラれるしね」

「そうだね」

「でも、藍先輩って誰からの告白もちゃんと聞いてくれるよね」

「そうなんだね」



告白って、一番心に残るシチュエーションだと思う。

でも、それをしたら、終っちゃう。



「何回でも告白できたら良いのにね」

「……はっ、そっか、その手が」

「何よその手って」

「何回でもしたらいいんだよ!そしたら覚えてもらえる!!」

「え、菫、本気?」

「うん!!」

「あはは、ほんとバカだなぁ…けど、菫らしいね」



たった一度しかない高校生活のなかで、好きな人の頭の端にも残らなかったなんて、そんなことしたくない。

何としてでも、覚えてもらうんだ。



「さっそく、明日告白しにいく!」

「がんばって!フラれるんだからへこたれるなよ!」

「う、うん!がんばる!」


百合ちゃんの激励をもらい、私は家に帰ったらすぐに呼び出し用の手紙を書いた。
できるだけ目を引くような、綺麗な便箋で、綺麗な字で…!!


「よし、」


明日の放課後、私は、藍先輩に告白します。


フラれるんだろうな~…

けど、明後日も告白するんだから、関係ないよね…!!
私の心が壊れない限り、大丈夫大丈夫!


頑張るぞ…!


気合いを入れて、手紙を鞄に入れた。


そして、次の日、いつもより早めに家を出て藍先輩の靴箱に手紙を放り込んだ。

既に一枚入ってたけど、予想通り予想通り!



あとは、放課後を待つだけ…


「菫おっはよー」

「おはよう!百合ちゃん、いつも早いんだね」

「まあね、あ、今日告白でしょ?」

「明日もだけどね」

「うんうん、ほんとに菫はすごいよ、私ほんとに応援してるからね」

「へへ、ありがと」




百合ちゃんはいつも私の背中を押してくれる。

百合ちゃんのためにも、私は精一杯がんばろう。


先輩が振り向いてくれるように。