「本当」
「なにが、」
「桐ちゃんのこと大好きってこと」
「…っ、そう、じゃあ質問させてもらうけれど、いったいいつから?なにゆえ?なんのために?私を騙して突き落とすつもりなの?」
「別に嫌ったことはねーよ。昔は、普通に好きだった。で、普通になんか大好き。」
「どうして!!!!???え、なんで??全然わかんないけど、理由もなく大好きになるわけないじゃん」
「落ち着けって」
「落ち着いてられるかっての」
逆になんで藍くんはそんな冷静なの?
私、そんなおかしい?藍くんが私を大好きなことおかしいって思ってるの私だけ?私だけじゃないって。私が藍くんのとりまきならデモ起こしてるとこよ。
別に、自分を過小評価してるわけでないけれど、
それでも、こんなのおかしい。
「別に、いいんじゃないそんな深く考えなくたって。俺達付き合う訳じゃないんだろ」
「へ、」
藍くんは私から離れると食卓から離れてソファーに座った。私は、慌てて立ち上がり藍くんに近づいた。
藍くんは、相変わらず淡々とした口調だった。
「俺は桐ちゃん好きで、桐ちゃんも俺のこと曲がりなりに好きなんだろ。
それで?」
「え?」
「そのさきは?」
私が黙りこむと、藍くんは、ふっと鼻で笑った。
「大丈夫だって、あんたが俺の見た目だけしか好きじゃないって分かってるつもりだし。
何がしたいわけでもないってこともな。
で、俺も、好きでもその先はいらない。
桐ちゃんと付き合うつもりはないし」
藍くんの手が私の手のひらに少し触れて、軽く掴んだ。
私は、藍くんの目だけを見ていた。
綺麗な、とてつもなく綺麗な瞳だった。
私の目を何の淀みもなくしっかりと捉えていた。
何もかも、見透かされているように。
「桐ちゃんは、今まで通り、残りの期間大好きな料理と掃除で、大好きな俺に奉仕すればいいんじゃない」
「自意識過剰なんじゃない」
「ちげーの?」
「そうだけど、ご名答です」
そうして、お互い軽く笑った。