私は美しいものが好きなのだ。

だとしたら、そうなのだろう。


彼の人格だけでは、抗えない恋心は彼の姿形のせいなんだろう。


今さらだが、ひどいな。私は。



「うん、そうだ。私は彼が好きなんだわ」


「やっとわかったのか」


「けれど、私の気持ちは、普通の女の子が抱くような、好きな人の優しいところが好きとか真っ直ぐなところが好きとか、そういうのではないの。

私は彼の姿形しか好きじゃない、人格は好きじゃない」



こんな私でいいのだろうか。

こんな好きでいいのだろうか。


そんな疑念が新たに沸いて出てくる。

私がこの気持ちを受け入れたとしても、この世界の少女マンガのヒロインはそれを許してはくれない気がする。



すると山花はなぜか笑っていた。



「桐はすごくすごく素直なだけだ。

世の女はだいたい顔と姿が好みなら好きになる。そこに優しさとか真っ直ぐさがあったら、それは好きになる理由にできる。

だけど、ブサイクは好きにならない。優しくても真っ直ぐでも好みにはならない。理由にもならない。それだけだろ」


「…なるほど」




今のは、私だけではないと言ってくれたんだろう。

このままでいいということ?




「話を聞いてくれてありがとう。なんとかなりそうな気がしてきたわ 」


「なら、よかった。」


「私はもう帰るね。パンとコーヒー牛乳と悩みごとがあったらまた会いにきていい?」


「ああ、あたしも、パンとコーヒー牛乳が欲しくなったら連絡する。
あと、勉強も、週末にまた連絡する」






私たちはそう約束して別れた。

今思ったけど、私、自らパシりに名乗り出たような。
まあ、いいか。