「死ぬほど痛かったけど、もう族とは関わんなくていい、スッキリスッキリ」


「どうして、抜けたんですか?そんな怪我してまで、辛かったんですか?」


「いや、辛くねーよ。別に。ただ、やりたいこと見つかっただけだから」


「それは?」


「聞く?感動秘話を!」


爛々と輝く目は、昼とは大違いで、本当にあの人だったのかと疑うレベルだ。

すごく話したそうな顔をされたのでとりあえず頷く。
すると、彼は語り始めた。



「中学のときに、悪い先輩と仲良くなって、成り行きでそのまま族に入って、やりたい放題してすごく楽しかったし、だから、最底辺の学校入ったけど、全然行ってなくてさー」


「へぇ」


「ちゃんと聞けよ。で、幹部まで上り詰めたけど、なんか、物足りなくなってさ、隣町の学校と喧嘩ばっかりで、最初はあんなに楽しかったのに、全然楽しくなくて、

2ヶ月くらい前に、その喧嘩で派手に怪我して、家帰るまでに道端で立てなくなったときにさ、ある人に会ったんだ。

その男の人が怪我の手当てしてくれて、そんでパンとコーヒー牛乳おごってくれて、
そんとき、聞かれたんだ。痛いのは楽しいかって、だから正直に答えちゃって、楽しくないって、

そしたら、あの人、人を傷つけるより、助ける方が気持ちいいに決まってるって、力があるなら人を助けるためのことをしろって言われたんだ。

だから、そうするって決めた」


「つまり?」


「医者になる!!!」


キラキラした目だった。


ああ、この人は、きっといい出会いをしたんだろうな。
この人の力を正しいところへ導いてくれる、いい出会いを。



「その人、心臓が悪いんだ。その人になにか恩返ししたいって思ったら、それしか思い付かなくて、

その人の病気を直すことはできないけど、
その人が望む人になったら、もしかしたら、また会えるかもしれないし、それに、もしかしたら好きになってくれるかもしれないし!」


「そうか。うん。……好き?」


「いやーー、それがさ、その人すんごいイケメンでさー、もう一目惚れっていうか、もう、族してる場合じゃないなって思ったよね」


「あなたは、あの、ゲイだったの?」


「は?」



束の間の沈黙。

ぱちくりまばたきをしたあとに、同時に二人で首をかしげた。



「え、」


「え、だって、男の人を好きなんでしょう?」


「女だけど、あたし」




え、





えぇえーーーーー!!!!!??