「はい、とりあえず長さ揃えといたわよ~
どう?」
本当にあっという間に終わった。
さっきから10分もたっていない。
姿見の鏡に映る自分を見て、短い髪に少し新鮮な気持ちになった。
「うん、可愛い可愛い、ほら、あんたも見てやりな。」
「あ?ああ、さっきより全然良いね。それなら帰れる」
「はい…色々お手数かけました。けど、やはりお金を」
「いいってば~、ちゃんとした場所や設備もないし、金とろうなんて思ってないから、ね」
「けど、」
「はいはい、用が済んだんだから帰った帰った!」
お金は払えず、私はそのまま家に返された。
しかし、借りを作ったままというのはやっぱりいただけない。
今度なにか彼女にあったらもう一度お礼をしなくては。
再び藍くんの家に戻ると、さっきまで無かった藍くんの靴があった。
帰ってきてるらしい。
「おい」
「え、」
家に上がるなりいきなり藍くんの声が聞こえてきた。
少し驚きながら声の聞こえた方を見ると、藍くんが腕を組んで部屋から出てきた。
不機嫌そうな顔。
怒ってるのか。
「今から夕飯作るから少し待ってて」
「どこいってた?先帰ってたろ」
「夕飯の材料を買いに」
「買ったあとにどっか行ってたろ。今手ぶらじゃねーか」
どうしていきなりこんな態度なんだろう。
お腹がすいて怒ってるわけじゃなさそうだし、怒ってる理由は置いとくとしても、あなたのとりまきにいじめられましたなんて言えないし。
「それ言うなら、藍くんだってどこいってたの?いっつも私より遅いよね?
どこで何してるのよ」
「関係ないだろ」
「じゃあ私がどこで何していようがあなたに関係ないはずよ」
「………」
かべドーーーーン…
…今さら壁ドンなんて流行らないわよ藍くん。
けど、どうしよう。なぜだか知らないけれど、怒ってるのよね。
帰ってすぐに夕飯食べれないと怒るタイプなの?
それとも、…なんなのよ。
藍くんがじっと私の目を見たあと、髪に触れた。
「……なんかあったか?」
「別に、イメチェンよ、イメチェン」
「……あそ。もういいや。」
解放されたあと、藍くんは一度も振り返らないで自室に入っていった。そのあとを覗くと、ベッドに横たわっていた。
またねるのね。
けど、怒ってたというか、髪が短くなったこと気になってたのね。
そりゃあ、今まで、ずっと伸ばしてたから、かなり長くなってたし、
いきなりイメチェンでここまで切らないかもしれないけど、
ちょっとあんな顔で迫られたら、驚くよ。