同居なんて終わりにしてこのまま家に帰っちゃおうかな…
帰り道に何度もそう思ったけれど、
結局私は藍くんの家まで帰ってきてしまった。
勝手に自宅に帰るなんて、そんな無責任なことはできない。
私は、藍くんに夕飯を作らなければならない。
家まで戻ってきて、私は、止まった。
まず、この髪、どう説明すればいいのか、そして、汚れた服のことも、
気づかれないように着替えたとしても、髪だけはどうにもならない。
こんなバラバラの長さで、なんと言い訳すればいいか。
…美容室で失敗されたで、通るかしらね。
通すしかないわ。
「た、ただいま」
恐らく藍くんのがいるはずの部屋へ声をかける。
けれど、返答はなかった。
全ての部屋を見てまわったが、藍くんはいなかった。
どこかに行ってるのかしら。
そうだ、今のうちに早く着替えて、髪もどうにか長さだけでも揃えないと。
私は制服を脱いだあと急ピッチで新聞を床に敷き、髪を自分で切り始めた。
横髪と前髪はなんとかなったが…どうしても後ろは出来ない。
腕も届かないし、そもそも見えないので、何をどうしたらいいのかわからない。
泣きたい。
精一杯ハサミを持った手を背中にまわしながら、涙がこぼれた。
情けない。死にたい。
私は、なんでこんなことしてるのかしら。
藍くんのばか。
藍くんはなにも悪くないけど、貴方のために伸ばした髪が結果あなたのせいでこんな様になったことにはどうしても納得できない。
まあ、何もかも今更だけど。
ピンポーン
誰よ、こんな時に…
ほとんどそのとき自暴自棄になっていたので、ひどい髪型のまま私は玄関までいった。
だから、そんな心理状態の私は、外にいる相手も確認せずにドアを開くくらいのことは容易にできてしまった。
で、そこにいる人は残念なことに知り合いだった。
月島さんがこちらを見てすぐにぎょっとした目をして固まった。
「え?あ、……?あんた……」
「矢野桐です。用はなんですか」
「いや、用っていうか……どうしちゃった?その髪…というか、泣いた?白木は何してるの?」
「………ぅ、……」
「え、」
何故か再び溢れだした涙
そしてなぜか月島さんに抱きついた私
もう、もう、
もう!!!!!!
「藍くんは今家に居ませんんんんんーーーーー~~うぁあぁああああああ……」
「は!!?ちょ、ま、落ち着いてよとりあえず、ほら、作りすぎたカレー持ってきたからさ~
は、離してくれない…?」
部屋のなかに押し込まれて月島さんまで中に入ってきて、私はそこでようやく月島さんから離れて床に座り込んだ。