私は、友達がいなかった。
近づいてきてくれた子は、何人もいた。
それは、まだ、小さい頃のこと。
砂遊びも泥んこ遊びも、外で走り回ることも、大好きだった頃のこと。
幼い私は、無垢で、なにも知らずに、ただ笑っていた。
全部、嘘だったと、
知る前は。
『こら、貴方たち、遊ぶなら矢野も混ぜなさい』
『…矢野さん!お金かして!』
『たまには、友達と遊びたいよね』
私は、お金に守られていて、名家の娘で、私と仲良くするのはうちの両親のことを気にする先生たちに言われたから仕方がなくで、まったく話したことのない子にお金をせがまれたり、陰で、ハブられていたり。
昔っから、そんなんばっか。
気づいたときから、私は、藍くん以外の人が汚く見えてしかたがなかった。
成り行きに任せて過ごしていたけれど、やがて、私から人との距離を置きはじめて、それからは誰も私の相手なんかしなくなった。
なんて、
私自身の性格もきっとそうなった原因なんだろう。
昔から、素直じゃなかったからね。
「おい」
はっと、我に返ったとき、目線の先には地面と自分の長い髪が見えた。
「な、何よ、誰よあんた」
何やら、私の髪を楽しく切っていた子の様子がおかしい。
どうしたのかしら。
「寄ってたかっててめーらバカかぁ?恥ずかしくねぇのかよ」
「誰だっての、…関係ないでしょ!」
「ケンカならたいまんだろ普通わよぉ…あと、自分のテリトリー汚されちゃあね、関係ねーとか、言えないんだよ!!!」
「ひっ、」
「わ、」
土ぼこりが舞った。
彼女らが慌てて走っていく背中が見える。
何かしら。また、イレギュラーなことが…
「あんた、大丈夫かい」
「え?」
見上げた途端、私は、息を飲んだ。