ホームルームのあと、こっそり教室に入り何事もなかったかのように一時間目の用意をした。

藍くんは相変わらずチャラチャラして、授業もまともに聞いていない。
体育は必ずといっていいほどサボるか見学しているし…


私がこの人に嫉妬するなんてこと、
やっぱりあり得ない。


そうして、放課後になると、
藍くんはいつものごとく学校裏へ足を運んだ。

そしてまた、いつものごとく追跡する私…

ちゃんと決まりを守ってるのか毎回確認しないといけないし、別に気になってる訳じゃないしっ…


けれど、告白を断ってるのは分かってるけれど、私と付き合ってるとは言ってないみたい。
その証拠にとくに女子たちに変に見られたりしていない。

と、いうか、

付き合ってるってことになってるけど、
今の状態なら、付き合ってるなんて、ほんとに建前だ。

設定というか、

そういう、役、みたいなね。


本当は、お互い、嫌ってるもの。


彼は私のこと嫌いだし、

私は彼が嫌い。



「あたし、藍のこと全然いいなって思ってんだけどさー、少し試してみない?案外合うかもしんないしさ。」


あれ?

会話が…聞こえる。
ふと二人との距離を確認すると、いつもより近かった。

いつもなら、バスケ部とかバレー部とかの掛け声でなにも聞こえないはずなのに、
私の隠れているのは体育館を囲むように立つ木の陰だ。

そして藍くんはいつも体育館近くで会話しているのに、今日は木の近くで話しているんだ。


「ふーん、けど、付き合うより今の関係の方が楽じゃない?気使わなくていいし」


藍くんの背中しか見えなくてどんな顔でそんなことを言ってるのやら見当がつかない。
けど、声だけはちゃんと聞こえる。

てか今更気づいたけど、すんごい、近いーーー!!!


「だから、さ?試しにだって、良かったらそのまま付き合ったらいいじゃん」


よくよく見たら、あ、あの人、うちのクラスでいつも藍くんの近くにいる子じゃないか。

いつも告白してる子はちゃんと好きだって伝えるけど、この子はそんな感じではない。

なにか、とても、軽い。


「試さなくていいよ、そういうのめんどうだし」

「そんなこと言わないでさー、いいじゃーん、好きなやつとか居ないんでしょ?」


軽いのに、しつこい。

うう、私の藍く…じゃない。
なにをイラついてるの私は。

ただ、やっぱり、藍くんはすごく綺麗だから。

それを横取りしようとしてる人たちにムカつくのも少しあるのかもしれないな。