「で、私をこかしてまで引き留めるほどの用がなかったら今度こそ一発くらい殴らせてもらうけど、
あ、あと、制服のクリーニング代を要請する。
で、なに」
「別にこけさせるつもりなかったし、君が俺の話聞かないでいくから…」
「グーパンのあとに目潰しも足しておいた方がいいかしらね。どれだけ私の手が汚れたら気がすむの」
「なにも言えない」
「冗談よ。とにかく、なによ。私怒ってるのよ。ほんとに。」
「ごめんねほんとに。」
やっと初めて本心で謝ってくれたようなので、とりあえずは耳を貸す。
引き留めたかったのは本当らしいし。
腕組は外さずじっと睨み付けたまま月島くんを見る。
「俺、女苦手なんだ。特に、ビッチ系の…なんか、イケメン好きみたいな、きゃあきゃあするタイプの、君みたいな」
「…知ってるよ。藍くんが言ってた。あなたにあまり近づくなとも」
「うん、それは、有り難いんだけど、ちょーっと最近そろそろ克服しないといけないと思ってきて」
「どういうこと」
「俺、一応医大生なのに、女苦手じゃこの先どう考えてもまずいからさ、だから、その、少し協力してほしい、みたいな、ですね」
なるほど。そういうことか。
じゃ、ねーよ。
いやいやいや、そんなわけまずないから、落ち着け私。
「何いってんのよ。あんたが大学生なわけないじゃん。自宅警備してる高校生じゃないの?」
「しっつれいなガキだねこりゃ。どうみても大学生でしょ。この貫禄、体格、色っぽさ、」
「いや、そんないつもスウェット姿の人を大学生と思う方が難しいから」
「うーん、それもそうなのか。じゃあこれで信じる?」
そう言って差し出してきた一枚のカードのようなもの。
私は疑うようにそのカードを目を凝らして見た。
これは…大学の…学生証……?
へえ、…ほんとに大学…生…
「え、えっ、えええぇぇえ、てぃ、てぃてぃT大!!?って、あの、超難関の…あの、てぃ、T大っっっ!!?」
「そうそう、あの超難関のてぃてぃT大ですよ」
「ひょぉお、まじ、まじかっ」
「俺は君の態度の豹変ぶりにまじかって思ってるけど」