どうしたものか。
夕飯を作りながら悶々としていると、後ろから足音が聞こえてきた。
藍くんと分かっていながら私は振り向かないで包丁の先に集中した。
「桐ちゃん、」
「はい?」
「最近話しかけてくれないね」
ついにはこんな質問をされるくらい私は、拗ねていたようだ。
いざ、そんな風に言われるとなんて答えたらいいのか分からない。
「そんなことないよ」
「そう?ならいいけど」
そう言うとリビングのソファに寝転がった藍くんは、そのまま動かなくなった。
また寝たのかな。
藍くんはなに考えてるのかな。
私のこと、めんどくさいって思ってるのかな。
これは罪を償うための同居だとしても、そのせいで私が嫌われるのはなんだか嫌だ。
そう思われてたとして、私だって、彼が嫌いなんだから、
いいはずなのに。
もやもやもやもや
なんだか私らしくない。
考えすぎだ。
「キスでもする?」
「うん……え?」
今朝はパンかご飯どっち食べる?みたいなノリで今大変なことを聞かれた気がするのだけど。
振り向けばいつのまにやら藍くんがいて、腰に腕が回ってくる。
包丁の手を止めて藍くんの手を外そうと手をかけるけれど、固くてしっかりした腕は外れてくれない。
「離して」
「どうして?」
「私が離してって言ったら離せばいいの」
つい、そんなきつい言葉が口を飛び出して、藍くんの手がゆるんだ。
私は何か言おうとしたけど、結局口を結んだ。
私が変に考えすぎたせいだ。