ここは挽回しなくては、と、私が次にしたことといえば、夕飯を作ることだ。

藍くんの冷蔵庫を見た限り、あまり入っていないから買いにいかなくてはならない。

私は藍くんを起こさないように外に出た。


確かここに来る途中近くに買い物できるところがあったはず。

とりあえずそこに行こう。

ヒールをならしながら歩いていくと、すぐその場所についた。

見たことはあるけれど、こういったところに入るのは、これがはじめてだった。

自動ドアが開き、私はゆっくり中をうかがいながら入っていった。

結構人がいる…

そうか、夕方だものね。
私と同じように夕飯の食材を買う人が多いんだろう。


「みんな、かごを持ってるわね…」


あれに買うものを入れて、買うのね。
分かるわよ。

積まれたかごを一つ手に取り、さっそく私は食材を探した。


けれど、その前に、何を作ったらいいのか考えなければならなかった。

どうせなら、藍くんの、好きなものを作ってあげたいわ。

藍くんの好きなものか。






なんだったかしら。





いえ、違う。

私、知らないわ。藍くんの、好きな食べ物なんて。


「どうしよう」


おばさまたちがさっさっと食材をかごに入れていくなか、私は、突っ立ったまま動けなくなってしまった。

藍くん、あなたの好きな食べ物はなに?

ビーフストロガノフ?エスカベーシュ?それともガランティーヌ?


まったく分からない。



いったい、いったい、何を作れば…



「わっ、」

考え込もうとしたら、肩がドンッとなにかにぶつかった。



「邪魔」

「すいません……あ、」

「買わないならどっかいって」


そう言って私を睨み付けてから、だらしない格好のまま歩いていくその人は藍くんの隣人の、

確か…

そう、月島くん。