「私、3ヶ月家を出るね」
帰宅して、ママがおかえりを言ったあとに発した言葉がこれだった。
ママは至って冷静に、冷たい視線と切り替えた。
あ、ちょっと怒ってる。
「どう言うことかな?桐ちゃん」
じっとナイフとキュウリを構えて私に向かい合うママの威厳と言ったらすごい。
思わずごくりと息を飲んだ。
「藍くんを見つけたの、それで、罰を」
「却下よ。何をいってるの?」
「ごめんなさい、ちょっと省略し過ぎだわ。ちゃんと説明するから話を聞いて」
それから事のなり行きをママに説明すると、ママはナイフとキュウリをまな板の上に置き腕を組んだ。
そうして更に強い目付きで私を見たあと、
私の肩に手をおいた。
「それは、やむおえないわね」
「……え?」
「あなたの8年をもてあそんだのよ。許せないわ。
それにしてもそれで許すだなんて、あなた藍くんにはほんとに甘いのね。
私なら裁判を起こすところだわ」
「そ、それは考えなかった。けど、とにかくそういうことになったの。
いい…んだよね?」
「ええ、行ってきなさい。パパには私が説明しておくわ」
なんとか、了承を頂いた。
ひとまず胸を撫で下ろして自室へ戻った。
段ボールを出してきて、さっそく持っていくものを揃え始めた。
これらは藍くん家に送るものだ。
もくもくと作業を進め、それが終わる頃にはもう寝る時間になっていた。
土日があってよかった。
さっそく明日から藍くんの家へいくことになるわけだけど、なんというか、複雑な心境だ。
あの頃の藍くんに会えるのだから楽しみと言えば楽しみなのだが、今の藍くんに会うと思うと苦々しい気持ちだ。
まあ、それでも、形だけでも、昔の藍くんを間近で見れるのだからいいか。