いやあああああああああああああああああ
声に出なかった叫びが頭のなかを埋め尽くした頃、
やっと、事実に頭が追い付いてきた。
藍くんが目の前にいる。
それは、願ってもないことだ。私のことを忘れていないようだし。
だけど…
藍くんは、変わったんだ。
あの頃の約束も、もう、無いんだ。
意味、無いんだ。
「……なんでも、するの?」
「まあ、言ってみ?」
「昔の藍くんに戻ってほしい」
「うん、不可。別のにして」
「………私の8年間は、それくらいの価値はあるはずよ。あなたのためにどれだけ努力してきたと思ってるの、
藍くんに次あったときに、がっかりされないように、たくさん自分を磨いてきた。
勉強だって、手を抜かずやってきたわ。
その努力に見合うことって、藍くん、私をなめないでくれる?」
「う、ううん、相変わらず重いね桐ちゃん。」
「うるさい、藍くん、どうしてくれるの?」
「付き合うとか?」
「嫌よ、私、あなたが嫌いだもの。」
「ううーーーーんん」
藍くんは腕を組んで難しそうに顔をしかめた。
あ、その顔…結構いい…。
…私は何みとれているんだ。
とにかく、いくらあの藍くんでも、許してはいけない。
私は8年間消えたあの藍くんを待ち続けていた。
もうそれはどこにもいないのだと気付きもせずに。
ひどい。ひどすぎる、
こんなの、報われないにも程があるわ。
「あーー…わかった、じゃあ、3ヶ月‼3ヶ月、桐ちゃんと居るときは昔の感じになるべく戻るから、
それでどう?」
「どう…って、よくわかんない」
「だから、桐ちゃんと居るときは、僕は昔に戻って、桐ちゃんのこと喜ばすことしてあげるってことだよ。」
藍くんが私の髪をかきあげて軽くキスを落とした。
鼻血が出た。
ななななんですって。
今のは、確かに、昔の藍くんそのもののような気がした。
「どう?」
「い、い、いいね」
ほとんど我を忘れて親指をつき出していた。
そこでハッとする。
頭をぶんぶんと振り、藍くんから一歩離れ、腰に手をあてがう。
ここで、藍くんの思い通りではダメ。
あくまでも、これは、藍くんの罰。
主導権は、私のもの。
「甘いわ、藍くん。それプラス、3ヶ月同居くらいじゃないと許さない。
藍くんが約束したんだからね。私と結婚するって。」
「わーあははー、ストーカー怖いよー」
「これは罰なの‼怖いことなんてしないから、3ヶ月だけでいい。8年の罪を3ヶ月でチャラにしてあげるっていってんのよ。有り難いでしょ。
そしたら、藍くんのこと、もう待ったりしないから、期待とかしないし、恨みも持たない」
「なるほどね、それでチャラなら確かに、有り難い話かな。
はあ、じゃあ、家にいるときと一緒にいるときは昔の感じで、…ああ、つまり、果たせなかった結婚生活ってことね」
「そうね。けど、私、今のあなたが大嫌いなので、普通でいるときは私に触れないこと。湿疹がでるから。」
「了解了解。その期間は俺ら付き合ってるってことね」