一人の帰り道。
自分の夕食のことって、なぜかわからないけどめんどくさくなる。
藍くんのために作るときは、どんな料理を作れば喜んでくれるだろうとか、全部食べてくれるかなとか、それがとても楽しかった。
なのに、自分のためだけとなると、途端にやる気がなくなる。
お腹はすいてるのに。
私は、その日コンビニに手を出した。
あまりコンビニに行ったことがなかったので、正直充実度に驚いた。
スパゲティがあり得ないくらい美味しそうに見えた。
夕食を購入して、コンビニを出たとき、携帯がなった。
私は、歩きながらその電話に出た。
『あ、月島だけど、今日白木に会いに行ったけど』
「あ、はい。じゃあ、あの、今コンビニで夕食買ったんですけど」
『俺のとこで食えば。その間報告する』
約束を取り付けて電話を切った。
果たして、月島さんの言葉は藍くんに届いたのだろうか。
そして、藍くんの意志は、本当にお母さんのことと関係あるのか。
知ることが、出来るのだろうか。
とにかく、早く行こう。
私は、急いで帰り道をたどった。
月島さんの部屋の前でインターホンをならすと、すぐに中へいれてくれた。
「藍くんは、あの、」
「まあ、ゆっくり話すから、座って」
前のめりで言うとそう返され私は、自分を落ち着かせながら椅子に腰かけた。
月島さんは私が座るのを見てから口を開いた。
「まず、白木に手術する気があるのか聞いた。まあ、答えはNOだった」
「…はい」
「んで、やっぱり、あいつは母親のことがあったせいでああなってることも、分かった」
「そうなんですね、やっぱり…」
予想があたった。
だけど、分かったけれど、これからどうやって藍くんの思考を変えていけるのか考えても何も思い浮かばなかった。
「それと、あんたのこと、頼むって言われたけど」
「え?」
「その気、あんの」
「ないですよ、そんな」
月島さんは、その瞬間吹き出すように笑った。
「ははっ、…だよな。けど、俺はそう頼まれたから、あいつに何かあればあんたのこと頼まれてやる約束をした。
ま、無論、そんなのあいつの本心じゃないと思うから、これも使えるかなって、」
「どういうことですか?」
わけが分からず頭をかしげると月島さんがにっと笑った。
「少し、白木にふっかけてきたんだよ。俺があんたを好きっていう体で、お前が死んだら矢野桐をもらうって。
自分が死んだら矢野桐が俺のものになるっていう危機感少しでも持ったら、
生きたいって思う理由にはなるんじゃないかって、ね」
「……なんか変です」
「変じゃないよ。だって、大切な人のために生きていたいって想うもんだろ。普通は。」
けど、と付け足して月島さんは息をはいた。
「あいつ、重荷背負いすぎて、なんの躊躇いもなく俺にあんたを頼むって言ってきたよ。
どんな心持ちでいってんのか分かんないけど。
だから、やっぱり何よりもまず、白木から罪の意識を取んなきゃどうにもないないよ。あれ。」