「あんた何の抵抗もなくうちに来るようになったよね」
「え、そうですか」
「毎回友達いないと部屋入ろうとしなかったじゃん」
「ああ…それは、藍くんに行くなって言われてたし…けど、今はそれどころじゃないんで」
「まあ。いいんだけど」
月島さんが鍵を開けた。
私は月島さんのあとに続いて部屋に上がらせてもらった。
「ところで、白木が俺の家に行くなって言った理由は、わかってんの?」
「あ、ん?それは、……わかってますよ」
「そ、ならいいけど」
そっか。
確かに、今まで山花が居ないときにあまり一人で行かないようにしていた。
月島さんもそれを気にしてくれていたのかな。
居間に入り、私はテーブルを前にして椅子に座った。
正面に座る月島さんは少しぼーっとしてるように見えた。
「月島さん、疲れてますか?」
「んーー、……まあ、隣人がああなったら色々考えるけど、それは、あんたの方がでしょ」
「ですね。もう、最近それしか考えてなくて、授業なんか全然頭に入んなくて、」
「ん、で、相談は」
私は改まって、一度深呼吸をした。
「はい。あの、この前月島さんたちが病院から帰ったあと、藍くんが目を覚ましたんです。」
「らしいね。よかったじゃん」
「はい、それは、よかったんですが。藍くんに、もう来るなって言われちゃいました。
私、藍くんを励ましたいと思って色々言っても、全然届かなくて、むしろ藍くんが離れていってしまって、
だから、今は、少し距離を置くことにしたんです。
これからは、陰で隠れながら彼をサポートしていこうと思いまして」
「陰でサポートって?」
「心臓移植の金銭面の問題を負います」
「へー…。え?」
間。
あれ、私、言ってなかったっけ。
月島さんのすごく疑わしい目を向けられ私は、肩をあげた。
「あんたが…?金を……?」
「あ、の、うち、か、金持ちなので、けど、問題そこじゃないんです。
お金で解決できるなら私は、私ができること全部します。誰にでも頭下げます。でも、本当に問題なのは、お金じゃなくて、藍くんの意思なんです」
「………ああ」
月島さんが、感付いたように相づちを打ち、手に頬をのせた。
「あいつ、ずっとだよ。最初から生きようって思ってなかった。」
「……私、それってお金の問題じゃないなって思って…やっぱりお母さんのこと…とか、関係してるんですかね…」