先生に挨拶して、診療室を出た。
私の頭は、また色々なことでごちゃごちゃになってきた。

仮説だけど、きっと、そうだ。

彼があんなに生きることに全くといっていいほど希望を持っていないことに、私は最初金銭面のことだけだと思っていたけれど、それだけで生きることをそんな簡単に諦められるとは到底思えない。


募金とか、あるって先生言ってたし、藍くんだってそれを知ってると思う。

そう。希望はいくらでも持てるはずだ。なんなら、Webページで藍くんの美貌とプラス難病なんて来たら、お金なんてすぐ解決するのではないか。私なら大金ポンと出すね。


問題は、たぶん、そこじゃなくて。


お母さんに対しての罪の意識……なのか。



どうしたらいい。


私に、彼に生きることに執着させることは、きっとできない。

私と、彼のお母さんはほとんど無関係なんだから。

でも、このままじゃダメだ…



バカだな。私。

お金さえあれば全部解決できると思ってた。

今までそうだったから。


だから私はクズなのよ。


どうしよう……


ふと、私は十字路で立ち止まった。

ここを右に行けば藍くんの家。

左に行けば私の家。


一瞬迷って、私は右に進んだ。

藍くんを知っている月島さんが近くにいた方が、相談しやすいと思った。


藍くんは、もう長くない。

もたもたしていたら、すぐに時間が過ぎてしまう。


彼に生きる希望を、早く、持ってもらわないといけない。


私は急いで帰った。