「私のために貯めてくれているお金があるでしょ…?」

「そんなにないわよ」


「それも合わせて、資産もたくさんあるでしょう…」


「あっても、藍くんは私達家族とは関係ないもの」



ダメだ。


伝わらない。


そりゃそうだ。藍くんは家族じゃない。

娘の知り合いにそんな大金を払う家なんて、あるわけないわよね。

それでも、諦めるわけにはいかない。


私にとって彼は、家族も同然のような存在だ。


助けるべき存在なんだ。





「彼は、家族です」


「は?」



お母さんの怪訝な声を無視して続けた。



「私にとって、藍くんは、昔から片時も頭を離れなかった存在です。彼に会うためだけに生きてきた。彼の側にいるために生きてきた。

藍くんの側は、お母さんと、お父さんの側にいるようにとても、心地のいい居場所です。

彼を大切にしてます。愛しています。これからも、側にいたいです。

彼は、私の家族です。だから、私の家族を助けてください。助けるお金をください。何でもするから、お願い。お願いします。お願いします。お願いします」



手を強く握りしめた。

懇願するように頭を下げた。

また、涙で目が染みた。


私にはこうするしか他に方法がない。


お母さんとお父さんが頷くまで、私はこうやって何度でも頭を下げてお願いするしかないんだ。



「桐にとって、藍くんはそれほど価値のある人なの?」


お父さんが言った。

私は、強く頷いた。


「藍くんは、私の全てをかけて守るべき存在です」


「本当に?桐の人生を、藍くんにあげていいの?」


「いいよ。お金は絶対に利息つけて全部必ず返す。」


「一つ聞くけれど、彼は君のこと、どう思っているの?」