怒りの頂点から放ったその言葉を、藍くんはまるで嘲笑うかのように、あるものを私に見せた。
「あ、あ、私の携帯…」
「返してほしいなら保健室の外で待ってろ。
やることやったら、すぐ、返してやるから」
「なっ、」
「なんなら、お前も入る?可愛がってやるけど、」
「け、結構よ、このクズッッ、ゲスッッ、汚物‼‼‼早く終わらせなさい‼‼」
カーテンを閉めて保健室から出ると、ドアのすぐ横の壁に背中をつけて、ズルズルと落ちていった。
最低。
最悪。
あんなやつ、藍くんじゃないわ。
そうよ、ただの猥褻物だわ。
あの手に掴まれた私の携帯、もう、使いたくもないのだけど、データだけは取り戻しておかなければ。
あの時点で、私に主導権はなかった。
返してもらうにはああしてもらうしかなかった。
ああ、もう、あのベッドで寝れないわ。
最低よ。最低。
あんなやつがいるから、
世の中から戦争が消えないのね。
きっと、そうなのね。
膝をぎゅっと抱えて待つ。
ずきずきと頭と胸が痛む。
きっと、あいつが藍くんに似てるからだわ。
名前まで同姓同名だなんて、いったい誰の仕業よ。
同姓同名の同じ顔が二人存在するなんて、どんな確率よ。
しかも、藍くんは超絶きれいな顔。
もっともっと、確率は低いはず。
心も体も全てが綺麗だった藍くんと、
真逆の藍くん。
おんなじ顔して、やることなすこと真逆。
やめてくれないかしら。
整形してくれないかしら。
はあ…