「あれ…小鳥遊?」

「あ、阿久津くん。おはよう」

「おおお、おおは、よう……」

「どうしたの?」

「それはこっちの台詞なんだけど……」

「え?ああこの格好?高校生最後だからさ」

「そ、そっか。……あーあ、やっぱりなのっちにとられたの悔しいわ」

「阿久津くん……」

「ごめんな、諦めの悪い男で。でも今日でちゃんとケリつけるから!」

「あらら〜?夕凪と由貴くんじゃん!」

「月城……」

「由貴くんも大変ね」

「うるせぇ…」

「ふふふ、しかも今日夕凪どうした?!」

「高校生最後だから何となく…」




今日何度目だろうって思う質問を返す。



「なるほど!やっぱり夕凪はもとがいいからね〜」

「ちょっと…やめてよ美桜」

「んふふ、いいじゃない!ほんとのことだし!」



そういうと美桜が教室のドアを開けた。



「おはよう!」

「おはよ〜」

「おはよーう!あれ?小鳥遊さん…?」

「……うん」

「文化祭以来じゃん!メガネ外したの!」

「たしかに!今日卒業式だから?」

「うん。そう!」



ーガラッ



ドアが開いた方を振り向くと先生が来た。



「みんな席ついて〜。最後の出席とるよ。
名前呼ばれたら前来てね」



先生が一人ずつ丁寧に名前を呼んで、前で胸につける花をもらう。



「小鳥遊さん」

「はい」



先生の前にくると、先生は笑った。



「卒業おめでとう夕凪ちゃん」



私にしか聞こえない声でそう言った。


そしてみんなには渡すだけだったのに、私には花を直接付けてくれた。



「ありがとうございますっ」

「ん」



こうやって教室で先生に会うのは最後なんだなぁ…。