『ガラガラ』
 教室の扉が開く音がした。と、共に
 「あー!東雲さんだ!!今日は早いねぇ!!」
 女子生徒の声。ついっと本から目を上げる。
 「おはよう♪東雲さん」
 「…おはよう」
 声をかけてきたのは、同じクラスの川上明日香さん。
 ふわふわの髪とくりくりの目が特徴的。
 「何読んでるの?」
 川上さんは、いつも必要以上に話しかけてくる。正直、鬱陶しい。
 「…」
 答えずにいると、川上さんは困ったように笑って、本の題名を覗き込んできた。
 「英語!?うわぁ凄い!!東雲さん、こんなに難しい本読めるんだね」
 「…」
 良い子だとは思う。でも、きっと川上さんは私を相手することによって、自分は良い子だと確認したいんだろう。私はクラスの中で孤立しているから。
 「あの、東雲さん?ごめんね、読書の邪魔しちゃったかな?」
 「分かっているなら話しかけないで」
 「ご、ごめんね」