「…っ!!」
 ガバッと身を起こした。全身汗だくだ。
 「夢…?」
 徐に時計に目をやる。
 『5時30分』
 外を見ると、まだ薄暗い。
 ふーっと息を吐き、視線を布団へ移した。
 ぱさっ…と、私の長い黒髪が落ちる。
 もう一度、眠る気はしなかった。
 あの子に、会いたくなかった。
 …あの子はたぶん、私が幼い頃に閉じ込めた感情なのだろう。
 あんなに泣いて…そんなに外に出たいのだろうか。
 誰にも望まれてないのに…。私自身にさえも。
 感情を無くす…それが本当に出来たならどれだけ楽だろう。
 私の中にも感情はやはり居て、閉じ込めた部屋から声を張り上げてくる。
 「怖い!!」「イライラする!!」「嬉しい!!」って。
 それを表に出さないことで、私の中の感情を受け流していた。
 そして叫ぶ。
 「お前は要らない」と。

 すっと目を閉じた。
 胸の奥には、まだ『あの子』の影が残っている。消えて。消えて。消えて。
 すーっと目を開ける。

 私の中にはもう、『あの子』は居ない。