空いている前のドアから私達は中へ入る。


「あ!皐月おはよー!」


中学からの友達、笹山雫が私に気付いて抱きつ いてきた。


「おはよ!雫も同じクラスだったんだね!」


「うん!…あれ?」


雫の目線が隣の翼に向けられる。


「彼氏?もうできたの?」


「え!?あ、いや…俺はその…」


動揺している翼のかわりに私が答える。


「道に迷ってたのを助けてくれて、友達になっ たの!」


「ふーん。そうなんだ。私、皐月の友達の笹山 雫です。」


律儀に雫は会釈をする。


「…如月翼。」


ん?さっきの勢いが全然ない。


「翼どうしたの?具合でも悪い?」


私がそう聞くと、パッと明るくなる翼。


「大丈夫だよ!皐月がいるから!」


「…え?あんたたち付き合って…」


「じゃあ、俺は席に着くよ。」


そう言って翼は黒板に書いてある席の通りに座 った。


「ねぇ。あの如月くんってあんたのこと好きな んじゃ」


「皐月!皐月の席はあそこみたいだよ!」


気がつけば私の後ろには、さっき座ったはずの翼が立っていた。


「本当?ありがとう!」


「…なんなのあの男…。」


雫がなにか呟いてため息をついていたが、私に は聞こえなかった。