トーコ。
なあに?
俺たち、別れよう。
―ああ。
またこの夢か。
元カレと別れたときの夢。
大きな嵐がきた、あの日の夢。
どうして―?
何度も聞いたセリフに、私はやっぱりこう返す。
限界なんだよ、俺ら。
そ…う……。
指輪、捨てといていいから。じゃあな。
もう少ししたら婚約指輪としてちゃんとしたのをあげるからな、
そうやって彼が言ったのは1ヶ月前のことだったのに。
彼の部屋を飛び出した。財布もスマホも、ハンドバッグごと置いてきてしまった。
そんなこと気づく余裕もなかった。
悲しみと頭痛で、泣きながら眠りについた。
その日、停電が起こった。
翌日、直ったばかりの電話に、留守電が入っていた。
彼かと思って出たら、
実家からだった。
“すぐに帰ってこい”
“姉ちゃんが”
お父さんの声。
後ろで泣き叫ぶお母さんの声。
そして、雨音。
今でもはっきり聞こえる。
雨はまだ止まない。