「秋安(アキヤス)先輩…」

そこに立っていたのは会社の、気になっている先輩で…
(やだ、恥ずかしいとこ見られちゃった)

すぐに体を起こしかけて、目眩とともに体が傾く。

そんな私を秋安先輩はぎゅっと抱き止めてくれた。



「…ごめんなさい、ちょっと体調が悪くって。」

「こんな日に体調悪いのに歩いてちゃダメだろう」


そんなこと言われたって―いつもならそう、言い返していたかもしれない。

秋安先輩は、まるで同期のように仲良くしてくれる、先輩だけど、友達みたいな存在。私は片思いしてるけど今の関係が心地よくて告(イ)えない。
…そんな関係だから。


でも、今日はそれ以上、声を出すこともできなくって。


頭いたい。つらい。
先輩が声をかけてくれた。嬉しい。
先輩の腕のなか、安心する。


ぼうっとする意識の中、ただただ先輩を見上げていた。