次の日の放課後。


屋上へ続く扉を開けると、そこにはすでに先客がいた。


それはぼくもよく知った人だった。


話しかけようと近づくと、異変にきづいた。



その人は泣いていた。



声を押し殺して、泣いていた。




どう声をかけたらよいものか、ぼくは黙ったまま見つめることしかできなかった。



しばらくするとぼくに気づいたのか、その人も振り返った。





「あ、千尋くん」





優歌さんはいつもと同じように穏やかに微笑んでいた。


けれど、その目は赤く、どこか儚さも漂っていて目を離せなかった。




「何が、あったの?」


「...ちょっとね」


「ぼくには何もできないけど、話を聞くくらいならできる。

よかったら、話して」



ありがとう、と優歌さんは言うと、少し間を置いて穏やかに話し始めた。