「ウ〜ン……ど~しても……中身知りたいなら……俺の家……来てくれないかい?そこじゃないと……話せる気がしないんだ……。」

「お前の家?……こっからどのくらいなんだよ。」

「10分ぐらいだけど……えっ!?待って!……来てくれるの!!?」

宮本は、俺が彼の家に行くということに反応した。理由は……まぁ分からんでもない。

「退院したばっかでまた入院するよりかはマシだろ。おら、行くなら行くぞ。」

「九条君……男前……!」

「なに?貴方達もう切り上げるの?始めたばかりでしょう。」

リッサが俺達のことを呼び止める。

「悪いなリッサ。ちょいと……面倒なことになってな。」

そう言いながら、俺は宮本のことを睨んだ。

「ごっ……ごめんなさい。九条君お借りしま~す……。」

「そういう訳だ。じゃあ、その寝っ転がってる猫の世話は頼んだぜー。」

リッサは察してくれたのか、引き止めずに行かせてくれた。俺ら2人は、タクシーに乗り、宮本の家に到着した。2階建てのアパートで、1階には『診療所』と書いてあった。

「お前……医者だったのか?」

「一応ね。対したことはしてないよ。ここは学生が多くてねー。なにかと繁盛してるよ。さぁ、上がって上がって。」

傘をたたんで、診療所の中から2階へと上がった。2階は普通の部屋で、質素な造りになっている。必要最低限の物しか置いていない。真っ先に思いついた言葉は、

「お前にしては綺麗な部屋だな。」

「まぁ……ここはいいんだけどねぇ。自室が……酷くて……。」

「おう、じゃあその部屋見せてもらおうか。」

「あっ……しまった……!!」

奥にある白い扉に向かって歩きだそうとする俺を止めようと必死だったが、扉のドアノブに手をかけ、回した。その部屋に、俺は呆然とした。

「お前……ほんとに……趣味どうにかした方
がいいぞ。マジで。」

「あはは……。」

いわゆる、ピンクルームと言えばいいのか。その部屋は、物に溢れていた。しかも、壁にはポスター、棚にはむき身のDVDと薄い本がギッシリ。床には怪しげな、名前も言いたくない道具が転がっていた。服は散乱し、カーテンは閉め切り、いかにも、変態や変人と言う言葉がふさわしい部屋だった。

「……俺の部屋より汚ぇ……。」

「うん……俺より汚い部屋なんてあるのかどうか……じゃなくて!!九条君!体……なんとも無いの?」

言われてみれば、体の中から熱が溢れる様な感じがする。体の芯が、徐々に熱を帯びる様な。風邪で熱を出したような感覚だ。心拍数は高め、運動していた訳でもないのに少し息が荒い。

「は?……ほんとに、なんなんだよ……これは……?」

そして俺は、宮本の発言に背筋が凍りついた。

「本当に……申し訳ないと思ってる。その薬ね……僕が調合したんだけどさ……自白剤と……その……媚薬をかけあわせたもので……。」

「……はぁぁっ!!?」

なんとも、厄介な薬を盛られた様だ。