その時、

パシッ
「え?」

腕を掴まれた

気づかれた!?

「何見てんの」

低い声

この教室は廊下の一番端で
もちろんあまり誰も来なくて
知らない人に腕を掴まれて

だんだん怖くなった私は

「ごめんなさい!見るつもりはありませんでした!」

急いで振り向いて必死に謝った

すると
「ごめん、別に怖がらせるつもりはなかった」

恐る恐る顔をあげる

…!?

「翔くん…」

まっすぐな目で見てくる翔くん
そんな翔くんの目に吸い込まれそうになる
その目はあまりにもまっすぐで
つい、見とれてしまった

「別にいいけど、女子一人で男子に近づくのは気をつけな」

そう言うとすぐに翔くんは立ち上がりドアへと歩いて行く

あたしのこと気づいてないのかな?忘れちゃったのかな?

「翔くん!」

思わず呼び止めた

翔くんは立ち止まった

「覚えてる?結愛だよ!北川結愛!」

すると翔くんは振り返った
そして予想もしていなかったことが返ってきた。

「誰?悪いけど人違いじゃね?」

「え…」

人違い…?
でも翔くんだ!ぜったいに翔くんだ!

「いや!絶対に翔くんだよ!結愛だよ!海で約束した結愛だよ!」

「わりぃ、やっぱ人違いだよ」

そう言って背を向ける

どうしよ!あ!四葉のクローバー!
しまった!落としたんだ!

「翔くんごめん!翔くんにもらった四葉のクローバーのストラップ落としちゃった!」

「そこまで調べたの?なに?俺の気引くため?」

冷めたような声で話す翔くん

ッツ!
そこにいるのは全く別人になったかのような翔くんであの優しい翔くんの姿はどこにもなかった。

「そんな…」

すると翔くんは振り返った
「多分俺は君の知っている翔じゃない」

そう言い残し、翔くんは出ていった


冷静にシーンと静まり返る教室

鼓動がなりやまない私の心臓

翔くんじゃない…?