「気がつきましたか?」
「先生、私・・・」
「少し無理をして熱が出ていたのですよ」
箔先生は大きな白い手のひらをかぐやの額に当てた。
「熱が引きましたね。もう大丈夫ですよ」
かぐやが部屋を見回した。
「銀司くんと白虎くんなら二人ともずっと傍に付き添ってくれていたんですが、招集かかり新たな任務ででかけましたよ」
「怖い夢を繰り返し見ていました。でも、二人が何度も出てきては助けてくれるんです」
「それはそれは、夢の中まで守りに来てくれるとは頼もしいですねー」
「今の私は、本当の私なのかな」
「安心なさい。以前とは少し違う雰囲気ですが、同じあなたであることは間違いありません。あなたは、あなたです」
「ちょっと、こらっ!!」
里の塀を身軽に乗り越えて、堀の上をムササビのように飛び里の外へかけていくかぐらを引きとめようとした里守の声は虚しく夜の空に消えていった。
「あれ、かぐやだよな」
櫓に立っている見張りの里守がもう一人に言った。
「あんなことするのはかぐらしかいないしな」
「ほら、クギの大樹に登っていった。あいつのお気に入りの場所だろ」
「記憶戻ったのか?」
「さぁ、そんな話は聞いてないけどな」