「おい、あそこ」


銀司の目は里の誰よりも遠くを見渡せる。


「かぐやのああいう姿をみると、以前と何も変わってない気がするな」


任務を終えた里守の4人が通りかかると、かぐやは大樹の上から飛び降りた。


「もういいのか?」


「うん、ありがと。私のことより、白虎怪我してる」


「大した傷じゃないがな」


「珍しいね」


一緒に後ろを歩いていた里守がバツが悪いそうにしていた。


庇って怪我をしたのだろう、それに寝不足の目をしている。


「すぐ治すよ」


かぐやは幼い頃より薬草なども使わずに、手のひらを当てることで体の不調を読み取り治すことのできる能力を持っていた。


初めこの力は里で大変重宝されていたのだが、次第に誰でも治せるわけじゃないということがわかった。


治癒を試みた患者が良くならず、しばらくして死に至るとかぐやが魂を奪ったのだと、その不思議な能力を忌み嫌い恐れるものが続々と現れたのだった。


「まだ、生命力に満ち溢れているものと、神が手元に呼び戻そうとしているものとの違いでしょう。かぐやちゃんは生命力あるものに力を貸すことができるのだと思います」


この能力について教えてくれた箔先生は、そう言ってかぐやの手をとって大切そうに包み込んでくれた。


「いや、報告が先だ」


「治してもらえよ、せっかく俺らの帰りを待っててくれたことだし」


銀司がそう言ってその場にどかっと座ると、他の二人も治してもらうことを勧めた。


「僕のせいで白虎隊長が怪我しちゃったのが申し訳なくて。かぐやさんに治してもらってください」


皆に言われて渋々上着を脱いで傷を見せた。


乾いた清潔な布をあて、竹筒の水で傷口を流すとかぐやはそっと手をあてがった。