私はざわめく木々の間を通り抜け、公園の奥の方へと入っていった。


雨雲のせいで辺りは暗くなり、人気のない公園は、大人の私でさえも薄気味悪かった。


〈 百合子にもしものことがあったら…… 〉


私は、暗い公園を見まわしながら思った。


〈 私は、正気でいられるかしら? 〉


百合子は私の一人娘であり、私の希望だった。


百合子には、たくさんの愛を注ぎ、たくさんの教育を受けさせ、たくさんの可能性を与えたい。


私には、定時制高校に進学し、働くという選択肢しかなかったが、百合子には、そんなみじめな思いをさせたくない。


百合子には、静かな絶望の中で生きてきた私とは違い、未来がある。


百合子には、子供の頃の私と違って、輝ける人になれる可能性がある。


百合子は私にとって、夢と希望そのものだ。


だから私は、百合子を誰にも傷つけさせない。


たとえそれが、悪霊でも……。