木々が生い茂る公園の中に小さな池があって、女の人はそこで立ち止まった。


百合子は、立ち止まった女の人にゆっくりと近づいて、女の人の前で足を止めた。


誰もいない、静かな公園で、二人は向き合った。


風が強く吹くと、木々がざわざわと音を立て、真っ黒い雲が辺りの光を遮った。


顔中に包帯を巻いた女の人は、小さな池を背にして百合子と向き合い、百合子を見下ろすと、地を這うような低い声を出した。


『あなた……、本当に……、私の顔を、見たいのね……』


感情のこもっていない、抑揚もない、本当に遅いその話し方に、百合子はゾッとして、足が震えた。


〈 もしかして、私は、来てはいけない所に来てしまったのかしら? 〉


百合子はそう思ったが、もう何もせずに家に帰るという選択肢は、百合子にはなかった。