顔中に包帯を巻いた女の人はそう言うと、木々をすり抜けるように、公園の奥の方へと入っていった。


そして、少し行くと立ち止まり、百合子の方を振り向くと、またあの女の人は、百合子に手招きした。


こっちにおいで、って。


百合子は、木々の生い茂る方へと手招きしている気味の悪い女の人を見つめながら思った。


〈 私は、この場所から走り出して、家に帰るべきじゃないかしら? 〉


漠然とした不安。


心の隅から、「あっちに行っちゃ駄目だ」とささやく声が聞こえてくる。


〈 百合子、学校帰りに知らない人に話しかけられても、ついて行っちゃ駄目だぞ 〉


お父さんは、そう言っていた。


雨が地面を叩く音が、しだいに強くなっていく。


百合子は迷ったあげく、気持ちを決めた。


百合子は手招きしている女の方へ、ゆっくりと近づいていった。