しばらくすると、私の目の前に50代と思われる小柄な医師がやってきて、私に話しかけてきた。


「山村百合子さんのお母さんでしょうか?」


私は、うなだれていた顔を上げて、泣きはらした赤い目で、小柄な医師の顔を見つめた。


「はい、私が百合子の母の小夜子です」


「はじめまして。

私は外科医の門倉と言います。

私が、百合子さんの緊急手術を担当させてもらいました」


「百合子の手術は、終わったんですか?

今、百合子はどこにいるのでしょう?

よろしければ、会わせてもらいたいのですが……」


私がそう言ったあと、二人の会話が止まり、私は嫌な胸騒ぎを覚えた。


「百合子さんなんですが……」


門倉医師は、重い口を開き、話を続けた。


「この病院に運ばれてきたときは、すでに出血多量で意識もなく、危険な状態でした。

内臓にも損傷が確認され、私たちは、すぐに緊急手術を行いました。

ですが……」


門倉医師はそう言うと、再び言葉に詰まった。


私は話を聞いているうちに、体中から血の気が失せていくような感覚を覚えた。


そして、恐らく聞いてはいけないであろう門倉医師の次の言葉を待った。