私は、何度も何度も、自分がシンデレラになった気持ちになって、物語の世界に入り込んだ。


どうして、貧しい灰かぶりの少女が、お姫さまになれたのか?


貧しい灰かぶりの少女は、今の私といくらも変わらない。


それなのに、どうして?


幼かった私は、その疑問をそのまま母に投げかけた。


「お母さん、どうして貧しい灰かぶりの少女だったシンデレラは、素敵な王子様と結婚できたのかしら?」


私の素朴な疑問に、母は私を優しく見つめて、こう言った。


「どうしてかしらね。

シンデレラは、運が良かったのかしら?」


「運が良かった?

ただ、それだけ?」


「それだけじゃないかもしれないわね。

そうね、シンデレラは、きっと神様にこう願ったんじゃないかしら。

『私を今とは違う自分にして下さい。

素敵な王子様と幸せになりたい』って」


「それでシンデレラは、幸せになれたの?」


「きっとシンデレラは、来る日も来る日も、心から強く願い続けてたのよ。

いじわるな姉たちのイジメにも耐えてね」



母の言葉を聞いた私は、静かに目をつぶり、そっと呟いた。


「本当に心から強く願えば、願いは叶うのかしら?」