約束の日の午後七時、仕事から帰ってきた武士は、仕事帰りに買ってきた弁当を百合子に渡し、百合子に言った。


｢百合子、お父さんは今から、お母さんのところに行って、お母さんと話してくるよ。

百合子とお父さんとお母さんが、また一緒に暮らせるように。

だから百合子は、ちゃんとお留守番できるね｣


武士がそう言って、百合子を見つめると、百合子は小さくうなずいた。


武士はその様子を見て、百合子はいつになったら笑うのだろうと思った。


｢だから百合子、今日はすまないけど、一人で食事をしていて欲しい。

お父さんは、話を済ませたら、すぐに帰ってくるから……｣


武士がそう言うと、百合子が珍しく武士に言葉を返した。


｢お父さん、私、もう一度お母さんと一緒にいれるの？｣