私は、できるだけ早く車を走らせ、母のいる病院へと急いだ。
元から母は心臓が弱く、入院や通院を繰り返していたが、今は病気も回復に向かい、二週間後の退院も決まっていた。
退院する母は、これから私たちと同じ家に住むことになっていた。
六十歳を過ぎた病気がちな母に、できる仕事はもうない。
一人では生きていけない母は、私が子供だった頃よりも、さらに弱い存在になっていた。
誰も頼る人がいない母を守ることができるのは、この世の中に、もう私しかいなかった。
〈 お母さん、私たち、小さな中古の家だけど、やっと自分たちの家を持つことができたの 〉
私は自分が幸せになれたことを、一番最初に母に伝えた。
〈 お母さんは、これから先のことを何も心配しなくていいのよ。
これからは、きっと、すべてのことが上手くいくはずだから…… 〉