私は、夢を見ていたのかしら?
夢と現実の境界線は、どこ?
気がふれた?
何かの病気?
私の頭をいろんな思いが飛びかう中、私は立ち上がり、フラフラとした足取りで家の電話に向かい、電話を手に取った。
「もしもし、山村ですが」
私は未だ落ち着かず、声はうわずり、震えていた。
「香川総合病院ですが、寺田絹子さんの娘さんはいらっしゃいますか?」
私は、受話器の向こう側の女性の声に、胸騒ぎを覚えた。
「あのう、寺田絹子の娘は、私ですが……」
「そうですか……」
受話器の向こう側の声が、少しの間、止まった。
「じつは、お母さまの様子がおかしいんです」
「母の様子が?」
私は思わず、高い声を出した。
「お母さまは、まるで何かに怯えてるみたいで……。
申し訳ありませんが、今すぐ寺田絹子さんの病室に来ることはできますか?」