テーブルに並んだビールの空き缶が六本目になったとき、私は自分が憧れていたあの桜井由美のことを考えていた。


私は中学生の頃、ずっとあの桜井由美になりたかった。


彼女は、近くにいるだけでまぶしくて、他のクラスメートとは違っていた。


彼女のような輝く宝石がいたからこそ、私は早くから自分が鉛色の石ころだと気づかされた。


彼女が輝けば輝くほど、私は自分が何の光も放たない鈍い鉛色の存在なんだと思い知った。


私は桜井由美になりたかった。


でも、そんな夢は叶わない。


私は、中学校生活も終わりに近づいていたある日、校舎の階段から、桜井由美を突き飛ばしてしまった。


今思えば、私はあんなことをするべきではなかったのに……。