私はその後も、武士に隠れて日中からお酒を飲んだ。


やってはならないことだとわかってはいたが、私はお酒を飲まなければ暗く沈んだ心を抱えて、何もすることができなかった。


〈 お父さんは優しい人だから、お酒を飲まないと心がパンクしてしまうの 〉


私が幼い頃に母が言った言葉を、私は思い出していた。


あの当時、私は、母が言っていることを少しも理解できなかった。


あの父が優しい人だなんて、母はなぜそんなことを言うのだろうって……。


でも今の私なら、母の言った言葉の意味を理解することができた。


私も百合子のあの怯える姿を見て、毎日、思い悩んでしまったら、心がパンクしてしまうに違いなかった。


私は、暗く沈んだ心が体を支配して、無気力になると、決まって冷蔵庫を開け、ビールを飲んだ。


私の体の中にアルコールが巡っていくと、私の暗く沈んだ心は軽くなり、私は少しだけ幸せな気分になれた。


頑張らなくていいよ。


必死にならなくてもいいよ。


お酒が私にそんなことを語りかけているような錯覚を私は覚え、私は酔いに任せて、束の間の幸せを楽しむのだった。