小さい頃から、二人でつらい思いをしてきた母は、死んでしまった。


いつの日か、私の憧れだった桜井由美になってもらいたいと思っていた娘の百合子は、心を壊してしまった。


私は、二つの大切なものを失って、生きているのがつらかった。


私は今まで必死だった。


もう二度と幼い頃と同じようなみじめな思いをしたくなくて……。


私は、他人を不幸せにしてでも、自分を幸せにしてあげたかった。


自分の考えが、人から蔑まされるほど間違っていることくらい、私だって知っていた。


でも、もしもあの寺田小夜子が何のチャンスも与えられずに、彼女が幼い頃と同じようなみじめな生活を、ずっと続けていかなくてはならないのなら、世の中はあまりにも不公平過ぎると、私は思わずにはいられなかった。