「百合ちゃん、今は怖いかもしれないけど、百合ちゃんは、この家を出て、学校に行かなくてはならないの。

百合ちゃんだって、これから先、ずっと家の中にいるわけにはいかないでしょ。

いつまでも、いるはずのないお化けに、怯えているわけにもいかないでしょ」


私の腕の中にいる百合子の体の震えは止まらなかった。


私は、そんな百合子を見ているとたまらないほど悲しくて、思いっきり百合子の小さな体を抱きしめ、百合子の頭を優しく撫でた。


私は、この子を幸せにしてあげたかった。


私は、この子を昔の自分とは違う輝きのある女の子にさせたかった。


もう一度私が、幸せではなかった子供の頃から、人生をやり直せたならという思いを込めて。


〈 でも…… 〉


私は、今にも泣き出しそうで、きつく目を閉じ百合子の小さな体を抱きしめた。


〈 百合子の壊れてしまった心は、もう私の手には負えない…… 〉