「小夜子、キミは百合子が言っていた顔中に包帯を巻いた女の存在を信じるかい?」


私は、武士のその言葉にドキリとして、鼓動が速まっていくのを感じていた。


私は、後ろめたい気持ちを抱えながら、武士の顔を見つめた。


「百合子が言っていた話は、現実離れしていて、馬鹿げていると僕はずっと思っていた。

だって、その女の包帯に隠れている顔は、原型を留めていないほどに傷だらけで、そんなバケモノみたいな奴が、果物ナイフを持って襲ってきたなんて……」


武士は、下を向いていた顔を上げて、私の顔を見つめた。


「そんな馬鹿げた話、僕は百合子の嘘だと思っていた。

でも、百合子は知っていたんだ。

背中をナイフで刺され、顔中を切り刻まれて殺された立川早苗の名前を……」


私は、武士の話を聞きながら、耳を塞いで、逃げ出したい気持ちにかられていた。